2004年,New England Journal of Medicineにおいてグラフト選択と長期開存率に関する報告がなされている658).その報告の中でCABGでは,人工血管が臨床応用されていないため,企業の研究基金による大規模前向き研究が行われていないことが指摘されている.グラフト選択の評価には中長期における冠状動脈造影が必須であるが,症状がない以上,患者負担で行うことは非常に困難である.このため,ほとんどの研究が後ろ向き研究であり,症例数も不十分で分析能力の信憑性が低いとのべられている.多数の後ろ向き研究を分析し,現在得られたコンセンサスは,LITAまたはRITAのLADのin-situバイパス開存率が優れているという点である.ITAの優位性は,開存率のみ結果が出ているだけであり,前述のSTSやEuro Score などのように複数因子を分析して,いかなる因子がSVG,各種動脈グラフトの開存率に影響を与えるのかは未知であると説明されている.そういった背景の中,多因子前向き研究のグラフト開存率研究の数少ない検討例として,RAの短期開存率の前向き研究190)が論評され,flow competitionがRAの短期開存率の危険因子としてあげられると指摘されている.また2004年には,短中期術後冠状動脈造影にて評価した多因子前向き研究が発表され,女性患者を橈骨動脈グラフト開存率の危険因子と指摘している178).これらの報告が指摘するよう,CABGにおけるグラフト開存率のリスク評価には,術後中長期に冠状動脈造影を行う大規模前向き研究が不可欠である.CABGにおけるグラフトは様々な種類が報告されているが,研究基金不足があり,未だ正確なリスク因子の同定ができていないのが現状である.