8 肝硬変を合併した症例に対する開心術
■ OPCABは,Child-Pugh分類B,もしくはCの症例の手術リスクを軽減する 【ClassⅡb,evidence level C】.
不可逆的な肝機能障害,特に肝硬変を合併した症例に対する外科手術はhigh riskであり,しばしば,出血,感染,肝不全,腎不全,長期挿管といった合併症を引き起こすだけでなく,適応を誤れば致死的となることが知られている498).しかし,肝硬変合併例に対する開心術の報告は少なく,しかも,少数例での検討しかない.現在,手術のrisk判定法として広く用いられているのはChild-Pugh分類である.近年の文献499)-503)によれば,体外循環を用いる開心術においては,Child-Pugh分類Aの症例は,死亡率が0~ 10%で,標準的な開心術は可能であるが,合併症の発生頻度は25~ 100%と高く,術前からの周術期管理が重要であるとされている.Child-Pugh分類Bの症例では,合併症の発生率は66~ 100%で,死亡率も41~ 80%と高く,待機的手術の適応はなく,緊急手術の適応も慎重な検討を要するとされている.Child-Pugh分類Cの症例では,手術は禁忌とされている.なお,体外循環を用いないoff-pump冠動脈バイパス術(OPCAB)が,Child-Pugh分類BあるいはCの症例に対して有効であったとする報告499),504)-506)もあるが,症例数が少なく,今後の症例の蓄積が待たれる.
虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)