14 低左心機能
■ 低左心機能を伴い,高度心筋虚血が証明されている重症多枝病変に対する冠状動脈バイパス術 【ClassⅠ,evidence level B】.
■ 心筋梗塞後の左室リモデリングによる低左心機能症例に対する冠状動脈バイパス術に加えて左室形成術 【ClassⅡ a,evidence level B】.
■ 多領域にわたる心筋梗塞後の高度低左心機能症例に対する冠状動脈バイパス術および左室形成術 【ClassⅡb,evidence level C】.
高度左室機能不全を伴う患者は,左室機能正常の患者と比較して,冠状動脈バイパス術の周術期および遠隔期死亡率が高く,特に低左心機能と心不全症状を有することは,周術期の危険予想因子である570),571).重度左室機能不全患者における冠状動脈血行再建術の有益な効果は同様の状態にある内科療法患者と比較して,症状緩解,運動耐容能,生存期間の点で,かなり大きい572).
虚血性心疾患における低左心機能は,心筋症などの特殊な病態でなければ,その原因は,重症多枝病変を伴い高度の慢性的心筋虚血に陥っているか,心筋梗塞後の左室リモデリングであるかに,二大別できる.その要因により治療法は異なることになり,高度虚血によるものであれば,血行再建で改善が期待できるが,心筋梗塞後の左室リモデリングであれば,血行再建だけでは解決せず,梗塞心筋の切除形成を追加することが必要となる.虚血による冬眠心筋(Hibernating myocardium)であるか,梗塞心筋であるかを判定するのは容易ではなく,心筋シンチ検査,ドブタミン負荷心エコー検査,最新の造影MRI 検査が有用であるとされている573)-575).一般的には胸痛などの虚血症状があり,高度心不全症状を伴っていない症例には,血行再建術が有効で,その適応は正当である.一方,重度心不全症状を有するが虚血症状の乏しい患者には,心筋虚血の有無を他覚的に証明することが必要となる.
高度低左心機能伴う患者に対しては,冠状動脈バイパス術に加えて左室形成術を施行することが,左室機能の改善に有効で,その予後を改善する可能性がある546),とされており,現在,米国NIH資金により,米国とヨーロッパで大規模試験が進行中である(STICH trial).
また,著しい低心機能に陥った虚血性心筋症でも,その大半が前下行枝領域の広範な心筋梗塞による前壁中隔梗塞後であることから,左室形成術が有効であるされている543),546)が,多領域にまたがる心筋梗塞を伴う高度低左心機能症例に対する左室形成術が有効であるとする報告もあるが決着はついていない576).
虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)