2 橈骨動脈グラフトに対するCa拮抗剤投与
 CABGのグラフトとして橈骨動脈の使用はCarpentierらによって初めて報告された249).その後の報告でグラフト閉塞率が高かったため使用されなくなった.しかし,
橈骨動脈グラフトが15年後に開存していることが確認されたため,再び使用されるようになった250).橈骨動脈は平滑筋層が厚い筋性動脈であり,スパズムを発生し
やすい.スパズムを予防するためCa拮抗剤が投与される.CABG遠隔期に橈骨動脈グラフトの血管造影を行った50例において,橈骨動脈グラフトの開存率は術後1
年で92%,術後5年で83%であった.カルシウム拮抗剤は術直後からヂルチアゼム(保健収載あり)を静脈内投与し,1日量100mgのアスピリンと一緒に1日量250mgのヂルチアゼムを経口投与した.閉塞した橈骨動脈グラフトは,カルシウム拮抗剤を服用し続けた27例では8本,術後6か月以降に中止した23例では4本であり,橈骨動脈グラフトの開存性向上についてカルシウム拮抗剤の有効性は示されなかった251).橈骨動脈と静脈グラフトに関する多施設無作為比較試験では,1年後の血管
造影による橈骨動脈グラフト閉塞率は8.2%で,加えてstring sign(1mm以下のび慢性狭窄と1度以上のTIMI flowを有するもの)の発生率は7.0%であった.1日量325mgのアスピリンの服用を術後6時間以内に開始し,カルシウム拮抗剤の服用を術後1日に開始し,6か月間継続された.カルシウム拮抗剤内服に関する比較はな
されていない252).橈骨動脈,遊離右内胸動脈,静脈グラフトに関する単施設無作為比較試験では,5年後に血管造影を受けた73本の橈骨動脈グラフトの開存率は95%で,右内胸動脈や静脈グラフトに対する開存率の優位性は示されなかった.全例で1日量2.5mgから5.0mgのアムロヂピン(保健収載あり)を6か月間服用し,加
えて1日量100mgのアスピリン服用を術翌日開始し,無期限に継続された.開存性について,カルシウム拮抗剤内服に関する比較はなされていない179)
 
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)