本ガイドラインにおける適応は,以下に示すACC/AHA 分類
Class Ⅰ,ⅡおよびⅢによる
Class Ⅰ: 手技・治療に関する有用性・有効性につきエビデ
ンスが存在する,および/または一般的見解の一致
を認める場合
Class Ⅱ: 手技・治療の有用性/有効性に関するエビデンス,
および/または見解が一致していない場合がある
Ⅱa: エビデンス/見解から有用・有効である可能性が高い
Ⅱb: エビデンス/見解による有用性・有効性が十分に確
立されていない
Class Ⅲ: 手技・治療が有用/有効ではなく,ときに有害とな
る可能性があることが証明されている,および/ま
たはそのような見解で広く一致している
それぞれのClass 評価におけるevidence level は,以下の3段
階に分ける
evidence level
A: 多数の無作為臨床試験またはメタ・アナリシスによ
り得られたデータ
B: 1つの無作為化試験,あるいは複数の非無作為化試
験から得られたデータ
C:専門家の一致した見解
2 基本方針
欧州では2011年にESC/EACTS Guidelines on myocardial revascularizationとしてPCI/CABGのそれぞれの適応についてのガイドラインが発表された.
米国でも2011 ACC/AHA/SCAI Guideline for Percutaneous Coronary Intervention, 2011 ACCF/AHA Guideline for Coronary Artery Bypass Graft Surgeryとしてそれぞれの血行再建法に関するガイドラインが改訂された.
我が国ではOPCABが全CABG症例中の60%以上を占め,手術成績も諸外国のそれに比べて勝るとも劣らないレベルになっているにもかかわらず,PCI とCABGの
症例数にはいまだに8 倍以上の隔たりがあるという先進諸国の中では類を見ない特殊な状況であり,欧米のガイドラインですべてを網羅することは不可能である.
2009年,日本循環器学会2000年のガイドライン「冠動脈疾患におけるインターベンション治療の適応ガイドライン(冠動脈バイパス術の適応を含む)―待機的イン
ターベンション―」の全面改訂が企画された.
この全面改訂では2006年にCABGに関する「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン」が既に出されていることから「冠動脈疾患に
おけるインターベンション治療の適応ガイドライン=待機的PCI=」としてPCI/CABGの適応も含める作業が進行した.しかし前項でも明らかにしたが本ガイドラインは,
その作成班が“CABGの適応とされた症例に対して如何なるグラフトをどのような対象者にどのように用いるか”を内外のエビデンスを集め検討を重ねた結果作成し
たものであってPCI/CABGの適応には言及していない.
そこで改めて国内の内科系・外科系諸学会で協議した結果,PCI/CABGを含めた冠動脈疾患に対する血行再建術のガイドラインとして,
一階部分:「PCI/CABGの適応に関するガイドライン」
二階部分:「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン」
「虚血性心疾患における待機的PCI のガイドライン」として位置づけることになった.すなわち,PCI/CABGの適応をまず検討し,それに従ってCABGあるいはPCI が
施行されようとする症例に対するそれぞれの血行再建法の指針を明らかにしようとするものである.
本ガイドライン,「虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン」では欧米の報告に加えて,我が国からの報告についても詳細に検討し,
我が国の実情に即したCABGに関するガイドラインを,特にバイパスグラフトと手術術式に重点を置いた.
推奨のクラス分類およびエビデンスレベル分類はACC/AHAのそれに準じた(表1).
表1 ガイドラインのクラス分け
虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)