2 患者リスク評価の問題点
 リスク評価における問題点として(1)いかなる変量を用いるのか,(2)用いられた変量自体が,患者個人の因子や,医療提供側の因子により変動すること,(3)用
いられた変量自体が,時間や医療技術の進歩に伴い刻々変化すること,等が挙げられている.現在では,STSデータベースとEuro SCOREが世界的なスタンダードとされ,多くの外科医がその恩恵に与っていることは日常の臨床活動の中で証明済みである.しかしながら,前述の改良点を考慮に入れると,CABGの患者リスクに関しては(1)患者自身の持つ冠状動脈病変の違い,すなわち生活習慣の違いが病変に及ぼす影響,(2)医療の進歩における補助手段の進歩による成績への影響,(3)手術術式の違いについては,十分考慮するべきである.たとえEuro SCOREやSTS risk algorithmが正確な評価法であるとしても,日本人の患者に適応する際に
は注意を要すると考えられる.言い換えれば,日本独自の,またはその地域独自の特徴を考慮したリスク評価法の確立が重要であり,理想である.
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)