文献/報告年平均術後年数患者数
開存率(%)または閉塞のrisk(odds rations)
グラフトLAD Dx Cx RCA(#1-3) RCA(#4)
1/2000 5.6 962 RITA¶ 1 2.0 2.8 2.6 3.8
2/2002 2.3 109 RA Composite 83.3%* 75.2% 70.0%§
3/2003 8.3 1339 SVG 1 1.29 1.39 1.63 1.34
4/2004 6.6 1434 LITA 97.2% 96.4% 91.1% RITA¶ 96% 93% 90% 79% 87%
5/2004 10 369 ITA 85% SVG 69%* 58% 56%§
7/2004 6.4 1408 LITA 97.1%* 91.7% 79.5%§
RITA 94.6%* 84.9% 88.8%§
Free RITA 96.2%* 91.9% 88.2%§
RA 87.1%* 91.6% 61.6%§
SVG 60.2%* 61.2%
1 左前下行枝(LAD)
■ 左前下行枝は,最も高い遠隔期グラフト開存率を期待できる冠状動脈である 【ClassⅡ a,evidence level B】.
■ 左前下行枝に内胸動脈を用いることは,大伏在静脈を用いる場合に比べ,良好な遠隔期の生存率,心事故回避率を期待できる 【ClassⅠ,evidence level B】.
■ 左前下行枝に,右内胸動脈を用いた場合,左内胸動脈と同様の遠隔期開存率が期待できる 【ClassⅠ,evidence level B】.

 冠状動脈領域別にみた遠隔期グラフト開存率を表3に示した73),101),133),135),137),195).遠隔期グラフト開存率は,遠隔期の報告があるITA,SVGの報告をもとにすると,LAD,Dx,RCA(#4),Cx,RCA(#1-3)の順で良好であった.言い換えれば,LAD,Dxは最も良好なグラフト開存率が期待できる冠状動脈であり,それに心後面の冠状動脈Cx,RCA(#4)が続いたRCA(#1-3)は最も遠隔期のグラフト開存率の低い冠状動脈であった.

 LADは最も灌流域が広い重要な冠状動脈である.そのため,遠隔期を含めた最も開存性の優れたグラフト材料を使用する必要がある.LADに対するグラフト選択は,最も重要な冠状動脈に最も遠隔開存の優れたグラフトが使用されるという理由で,LITAが使用されることがgold standardである73),101),137)

 LADに対し,ときにはRITAが使用されるが,LADに対する遠隔期(平均5.6年)グラフト開存率においてLITAとRITAでは差がみられなかった101).RITAの問題点と
して,再手術の際に損傷の危険性があることである.RITA-LADが行われた症例に対する胸骨正中切開再手術では,術前にCTにてRITAの走行を確認することによ
り安全に再手術を行うことが可能であったとの報告がある236)
表3 冠状動脈領域別グラフト開存率
*:LAD+Dx,§:RCA(#1-4),¶:free RITA を含む
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)