3 医療材料に関する矛盾
①人工心肺に関して

 当然のことながら,人工心肺という高額の医療材料を使用しないOPCABでは公的医療費節減に多大なる貢献をしている.その節減額はおよそいくらであろうか.
DPC時代においても手術当日に用いる特定保険医療材料である人工心肺関係のデバイスは出来高請求できるためコスト削減のincentiveは病院側にはほとんど働かない.そればかりか公定価格と購入価格(実勢価格)の差が差益として乏しい技術料に替わる病院の収益源になっているという根本的な矛盾から,OPCAB時代におけるCCABではなおさら経済観念はもち得ない現状がある.

②人工心肺非使用(OPCAB)用デバイスに関して

 さらに,DPCデータにしても出来高データにしても,表面に出てこない大きな問題として,保険請求不能の医療材料の問題がある.あらゆる手術の平均で,技術料の
約30%に相当する額の保険請求不能の材料を病院側の持ち出しで負担している662).これらの保険請求不能の材料の割合は内視鏡下手術など先端的な低侵襲手術ほど高くなる.当然のことながらこれらには公定価格は設定されていない.主要製品の定価を以下に示す.ほぼ各社横並びである.

 (1)スタビライザー:210,000円,(2)ポジショナー:150,000円,(3)内シャント:10,000~ 18,000円,(4)ブローアー:8,000~ 10,000円で,合計で約40万円弱で
ある.購入価格はこれより安価ではあろうが,OPCABの技術料の30%加算を軽くオーバーすることは間違いない.そこで実際上は本来single use と注意書きのある
デバイスの再使用もされているというのが現状といわれている.
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)