4 冠血行再建術適応決定における内科と外科の協力体制の重要性(ステートメント2)
 PCI とCABGは冠血行再建を共通の目的とする異なるアプローチであり,それぞれに固有の長所と短所を有している.PCI かCABGの選択に関しては,冠血行再建術の治療目的に対する効果を考慮することが基本であり,加えて合併症(脳卒中,感染,造影剤腎症,放射能被爆など)の可能性,手技の安全性・侵襲性,入院期間,医療費,患者の合併疾患も含めて総合的に適応を判断する必要がある.

 特に重症安定冠動脈疾患(左主幹部病変,左前下行枝近位部病変を含む多枝病変,特に低心機能,糖尿病を合併した多枝病変など)の患者に対しては,治療方針決定の前に内科医と外科医が協議し,PCI,CABGの短期と長期における治療効果,手技の安全性・侵襲性,再治療の必要性について十分なインフォームド・コンセントの場を持つことが推奨される.また同一施設内で心臓外科医とのハートチームの結成が困難な施設においても医療安全の観点から近隣施設の心臓外科と提携することが望ましい.いずれの治療法も,その成績は術者や医療チームの技量に依存するところが少なくないので治療の選択にあたってはこのことを十分勘案する必要があり,施設ごとの実績(対象数・重症度・初期~長期成績など)を公的に集計して,解析する必要がある.
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)