7 PCIとCABGを比較したランダム化試験を解釈する際の留意点
PCI とCABGを比較したランダム化試験は多くあるが,それらの結果を解釈する場合の留意点として以下の3 つが挙げられる.(1)歴史的に左主幹部病変,3枝病変
はCABGの適応と考えられてきたため,ランダム化試験の大半で左主幹部病変が除外され,3枝病変の割合も少ない.またエントリー可能な患者はPCI で治療可能な
冠動脈狭窄病変に限られ,明らかにPCI ではなくCABG適応と判断される複雑病変はエントリーされない.(2)CABGの治療効果が顕在化するのに必要な期間と考え
られている5-10年と比較して観察期間が短い.(3)積極的薬物治療の重要性が認識されているが,PCI とCABGでは経過観察中の薬物治療が異なっている.
唯一のランダム化試験であるSYNTAX試験は,左冠動脈主幹部病変または3枝病変1,800人(左主幹部病変39%,3 枝病変61%,糖尿病合併25%)を対象として
DESのCABGに対する非劣性を証明しようと試みた試験である.1年目の結果から1 次評価項目(死亡+脳卒中+心筋梗塞+再血行再建)はCABGよりもDESが高
率であったため非劣性を証明することはできなかった17).3年目の結果ではCABGと比較してDESは死亡率(CABG vs. DES: 6.7% vs. 8.6%),脳梗塞発症率
(3.4%vs. 2.0%)に有意差を認めなかったが,心筋梗塞発症率(3.6%vs. 7.1%)と再血行再建率(10.7%vs. 19.7%)は高率であった18).しかしこのSYNTAX試験においても対象となった3,075人中,PCI とCABGのどちらでも治療可能と判断されたものは1,800人(59%)であり,残り1,275人のうち84%(1,077人)はCABGのみが,16%(198人)はPCI のみが適応があると判断され,ランダム化試験にはエントリーされずレジストリー試験として登録されている.CABGにレジストリーされた主な理由はPCI による治療困難な複雑病変(70.1%),慢性完全閉塞病変(22.0%),PCI では合併疾患(70.7%)とグラフト使用困難(9.1%)であった.観察期間は5 年
間までの予定であり,薬物治療に関してはPCI 群と比較してCABG群では抗血小板薬, スタチン, β 遮断薬,ARB,Ca拮抗薬すべてにおいて投与率が低い.
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)