2 右内胸動脈(RITA)
■ 両側の使用は術後遠隔期のmortalityおよびmorbidityをともに低下させる 【ClassⅡ a,evidence level B】.
■ in-situ RITAの吻合部位は左冠状動脈領域を優先するべきである 【ClassⅡ a,evidence level B】.

 LITAの使用例の好成績を受け,RITAも加えた両側ITAの使用が一般的となり,中~長期成績の後ろ向き検討によれば,若年症例81)-91)はもとより高齢症例92)-95)においてもmortalityおよびmorbidityを低下させることが報告されている.また,両側ITA使用の片側ITAに対する生命予後に関する有意性は術後20 年以上にわたって拡大し続けることが示されている57).術後のgraft 開存率については特に我が国の追跡調査が優れており,RITA-LADについてはLITA-LADと同等の開存率68),96),97),RITA-CxについてもLITA-LADと同等の開存率96),98)-100)であることがほぼevidenceとして確立しているのに比し,RITA-RCAに関しては,報告例は少ないものの,開存率は約80%と低く,術後のmorbidityも高いという報告がある73),93),101),102). その一方で近年OPCABの増加に伴い,free-graftとしての使用が増加しており,中枢側吻合部としては通常の上行大動脈73),103)の他にLITA104)-109)が多く用いられ,良好な開存率に加え,グラフト到達距離の拡大が報告されている.両側ITAの使用時の術後合併症として縦隔炎を考慮する必要があり,ハイリスク群は糖尿病(特に肥満女性)110)-112).閉塞性肺疾患合併例73),96)-113)で,ITAのskeltonizationは縦隔炎のリスクを低下させるという報告がある37),111),114)
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)