Ⅰ 術式

1 冠動脈バイパス術の適応
 日本冠動脈外科学会統計によると,我が国における初回・待機的CABGに占めるOPCABの割合は,2000年に20%を超え,以後漸増傾向にあったが,2007年以後
は65%前後を推移している1).新規の技術や器具の開発なしでは,平衡に達したと考えられるが,欧米の平均が20%であるのに比し,日本,韓国,中国など東アジ
アではOPCABの普及が高い.

 我が国におけるCABGは,(1)PCI が諸外国に比し突出して普及している,(2)CABGの絶対数に比し施設が多いため,一施設あたりの症例数が少ない,(3)高齢者の比率が高い,(4)OPCABの比率が高い,(5)動脈グラフトの使用割合が多いなどの特徴を有している.

 このような特徴から,欧米のCABGに関するガイドラインをそのまま適用するには若干の問題があることと,OPCABの適応を広げることに対して留意すべき事項を検討する必要がある.我が国では,日本胸部外科学会における学術調査2)や日本冠動脈外科学会における全国アンケート1)が年次報告されており,また,日本心臓
血管外科手術データベース機構から, 成人部門JACVSDによるデータおよびリスク評価などが公開されている3),4).これら我が国の成績と,諸外国からの比較的
大規模研究をもとに,検討した.
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)