1 大動脈弁狭窄症(AS)
■ CABGを行う患者で重度大動脈弁狭窄症を合併する場合大動脈置換術を施行すべきである ClassⅠ,evidence level B】.
■ CABGを行う患者で中等度大動脈弁狭窄症を合併し,大動脈弁人工弁置換術同時施行しても手術のリスクが低い場合大動脈弁人工弁置換術の適応となり得る
    【ClassⅡ a,evidence level C】.
■ CABGを行う患者で軽度大動脈弁狭窄症を合併し,大動脈弁人工弁置換術同時施行しても手術のリスクが低い場合大動脈弁人工弁置換術の適応となる可能
    性がある 【ClassⅡb,evidence level C】.

 我が国におけるCABG症例での大動脈弁人工弁置換術(AVR)同時施行例は欧米に比べ少ないながら,日本胸部外科学会の2003年annual reportによれば大動
脈弁手術中CABG同時施行例は16%であり,食生活の変化・高齢化等によりさらなる増加が予想される507)

 CABG+AVRの死亡率は1.3~ 14.1%とまちまちで,一般的には単独CABG(0.8~ 3.1%)よりもハイリスクであるが508),重度AS,symptomatic ASではAVRに
より予後は改善されるのでAVRを行うべきである509),510).最近のCABG+AVRの成績向上や511),512),軽度AS患者の24%がCABG後6 年でAVRを受けるとの報告511),初回CABG時に軽~中等度ASを放置し,後に施行されたdelayed AVRでの高い手術死亡率(14~ 24%)が明らかとなり513)-515),近年軽~中等度ASに対するAVR同時施行の優位性の報告が増えつつあるが,一方で軽度AS(mean PG< 15mmHg or 大動脈弁口面積>1.5cm2)ではdelayed AVRの方が遠隔成績良好との報告もある516)

 CABG後のASのnatural progressionに関するデータはほとんどないが,Asymptomatic ASのnatural progression(PG 7~ 8mmHg/年,大動脈弁口面積0.1cm2/年)が報告されたものの517),進行度は個々の症例でまちまち(<10mmHg/年~20~ 50mmHg/年)であり518),初回診断時AS が重度な症例よりも軽度の方が進行が早いこと519),520)などからも予測は困難である.70歳未満のlow risk患者や80歳未満のrapid progression(10mmHg/年)患者ではAVR同時施行が好ましいとの報告がある521)
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)