1 虚血性心疾患を伴う胸部大動脈瘤
高齢者の増加に伴い虚血性心疾患を伴う胸部大動脈瘤患者が増加している.その頻度は胸部大動脈瘤患者の16 ~ 30%もあり547),弓部大動脈人工血管置換術と冠動脈バイパス術の同時手術は15 ~ 30%に施行されてきた548),549).日本胸部外科学会のAnnual reportによると2003年に我が国で施行された胸部大動脈瘤の手術のうち8.7%にCABGが同時に施行されている507).
同時手術の死亡率(14~ 55%)は弓部置換単独(7 ~24%)に比し有意に高い548)-553).超低体温を用いた待機手術の検討でも,選択的脳還流を用いた待機手術の検討においても,CABG併施が死亡率,合併症発生率において有意な危険因子となっている549),552),553).
しかし,心筋梗塞は胸部大動脈瘤の術後早期死亡原因の主要因子であり,死亡率改善のためには冠状動脈狭窄を同時に手術する必要がある554),555).遠隔期成績に関しても,心筋梗塞は遠隔期主要死亡原因であり,遠隔期成績改善のためにもCABGは重要である555),556).
虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)