7 禁煙
■ すべての喫煙者はCABGの術後に教育的なカウンセリングを受け,禁煙療法を受けるべきである 【ClassⅠ,evidence level B】.
■ ニコチン補充やバレニクリンなどの薬物療法は禁煙しようという意思をもつ患者に対して行われるべきである 【ClassⅠ,evidence level B】.

 喫煙は防ぎ得る死亡原因のうち最たるものである282).CASS studyによれば,CABG術後の禁煙は,狭心症の再発を減らし,身体機能を改善させ,再入院を減らし,就労の継続を可能にし,生存率を改善した(CABG術後10年目の生存率では,禁煙した場合84%,喫煙を続けた場合68%であった,p=0.018)283).また,CABG術後の禁煙は,非喫煙者の術後生存率に匹敵するまでに禁煙成功者の生存率を改善する.喫煙を続けた患者では心筋梗塞と再手術が有意に多かった284).喫煙は静脈グラフトのアテローマ硬化を引き起こす285).CABGの術後,すべての喫煙者は教育的なカウンセリングを受けて,もし適切と思われるなら,薬物療法を含む禁煙療法を受けるべきである.

 米国のガイドラインにおいてニコチン代替療法剤以外の薬物療法として塩酸ブプロピオンSRが第一選択薬とされている.しかしブプロピオンは国内未承認で使用できない.一方で2008年よりバレニクリンというニコチンを含まない禁煙補助薬が承認され国内でも使用可能となった.CABG術後にバレニクリンを使用した臨床データはまだ不十分であるが,心血管疾患をもった患者に対する禁煙療法としてバレニクリンを使用した二重盲検試験では,プラセボと比較し心血管イベントを増やすことなく禁煙率を向上させている286)
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)