1 治療適応
Awake OPCABの対象となる患者は,本術式が最初に報告されたときはLAD 1枝病変や,RCAを含め2枝病変に限られていた.とりわけLAD1 枝病変の患者で,呼
吸機能低下症例や担癌症例などの合併症併存例では,左肋弓下アプローチのRibcage lifting法や,H graft法が低侵襲で有用であると報告されている679),680).近年ではAwake OPCABと全身麻酔によるOPCABを比較した小規模前向き研究や681),両側内胸動脈を使用したAwake OPCABの症例報告もされているが682),いずれの報告も厳密な患者選択基準は記載されておらず,いわゆる機械的人工呼吸(全身麻酔)が困難な症例に有用であると記載されているのみである.しかしFEV 1.0が50%未満の閉塞性呼吸機能障害症例はAwake OPCABの適応とはならないとしている報告もある680).
またAwake OPCABを施行しているいずれの施設からの報告も平均手術時間は180分以内で,平均バイパス数も最大で2.8枝までで早くて確実な手技が求められる.このことから180分を超える4枝以上の多枝バイパス症例は現段階では適応から外れると考えられる679)-684).
Awake OPCABの有用性に関しては,報告例や,その症例数からもまだ問題の多く残るところである.しかしOPCABにおける胸部硬膜外麻酔の動脈拡張作用,不整脈抑制作用,さらに挿菅全身麻酔を避けることの利点は大きい.今後さらに臨床研究を重ねてより安全で確実なAwake手術を確立すれば,さらなる低侵襲CABGへの道が開ける可能性がある.
虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)