急性冠動脈症候群に対する治療方法の,代表的な選択肢としては,血栓溶解療法を含めた薬物治療,カテーテル治療(PCI)および冠動脈バイパス術(CABG)が挙
げられる.不安定狭心症(UAP)やST上昇を伴わない急性心筋梗塞(NSTEMI)の場合には,PCI やCABGによる早期の冠動脈血行再建を行う方が,薬物治療より
も,良好な長期予後を期待できる598)-601).また,ST上昇を伴う急性心筋梗塞(STEMI)の場合でも,早期に施行できるのであればPCI やCABGの方が薬物治療よりも,良好な短期・長期成績を期待できる602)-604).
UAPやNSTEMI に対するPCI とCABGの成績を比較すると,病院死亡率に有意差はないが,CABGを行った患者において合併症の発生率が高く,入院期間も長い傾向にある.また,1~ 5年の生存率にも両者の間に有意差はないが,PCI を行った患者において,再度,何らかの冠動脈血行再建術が必要になる危険度が有意に高い605)-607).それに対しSTEMIの場合には,循環動態が不安定になればなるほどCABGよりもPCI の方が,治療法としてより積極的に選択される傾向にある.
しかしながらショック状態となったSTEMI症例においても,高度のLMT病変や多枝病変を有する場合には,PCI による救命率はCABGと差がなく,さらに救命後の遠隔
成績はCABGに劣ると報告されている608)-610).
1 CABGの適応
虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)