CABGの適応となった急性冠症候群のうち,UAPでは原則的に一刻も早く血行再建を行うべきであろう.またAMI を発症していても,循環動態の安定している
NSTEMI であれば早期の手術が望ましい611).しかしながら多くのAMI 症例においてCABGのタイミングは難しい.できるだけ心筋壊死を少なくするという観点から
は,ゴールデンタイムと言われる発症後6時間以内の血行再建が望ましいとされる.しかし反面,この時間帯にCABGを行った場合の死亡率12~ 17%は,発症後24
時間以上経過してから行った場合の死亡率3~ 4%に比べると著しく悪い612),613).多変量解析を用いた検討では,高齢・低左室機能・術前ショック状態は独立し
た危険因子であったが,CABGを行ったタイミング自体は死亡率に影響しなかった612),614).すなわちこれは,AMI 急性期の循環動態が不安定な時期にCABGを行った場合,早期血行再建による心機能回復のアドバンテージを持ってしても,手術という大きな侵襲を乗り切れないケースがあることを示している.したがって,AMI 発症早期にCABGを行う場合には,必要に応じてIABPやPCPSなどのメカニカルサポートを用い,患者の循環動態を安定させることが肝要だと考えられる.
2 手術のタイミング
虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)
Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)