2 人工心肺使用,非使用による違い
■ ローリスク例においては,OPCABはCCABとの比較において,手術死亡(30日),1 ~ 2年までの死亡に有意差は認めない 【ClassⅠ,evidence level A】.
■ ハイリスク例においては,OPCABはCCABと比較し,早期死亡を減少させる 【ClassⅠ,evidence level B】
■ OPCABは,CCABと比較し,周術期合併症の頻度が低い 【ClassⅠ,evidence level A】.
■ OPCABは,CCABと比較し,人工呼吸期間,ICUおよび入院期間が短く,出血量,血液製剤の使用が有意に少ない 【ClassⅠ,evidence level A】.

 我が国における初回待機CABGにおいて,70歳以上の高齢者が,2000年には40%であったが,2010年には50%に増加した.一方,初回待機CABGの手術死亡率は,年々減少し,1999年に2.0%を切り,2010年には0.75%となった1).高齢者が増加したにもかかわらず手術成績が向上した原因は,OPCABの普及が大きく貢献している.Propensity score を用いたメタ解析で,OPCABは手術死亡率,脳合併症,急性腎不全,輸血量において優れていた15).他にも,創感染,人工呼吸管理,IABP使用,出血再開胸などを減少させたと報告されている16)-18).しかし,逆にOPCABがCCABに比し,成績が悪いとの報告もある.CCABとOPCABを比較した多施設前向き研究であるROOBY studyは,18施設2,203例の大規模研究であるが,OPCABでは,グラフト本数が少なく,予想に反して脳合併症が多く,1年後の成績でも死亡や再血行再建などでCCABに劣っているとの結果であった10).しかし本研究では,卒後6~ 10年で,OPCABの経験の少ない医師が術者となっていることが問題として指摘されている.OPCABはCCABに比し,技術的に難易度が高いため,術者やチームの経験や技量が反映されやすい.上行大動脈への操作や,体外循環・心停止を回避するOPCABの利点は,ローリスク例においては認めにくいことも指摘されている.

 OPCABとCCABで,遠隔期のグラフト開存率に差が見られるか否かについて,BHACAS studyでは,6 ~ 8年後のグラフト開存に差は認められず,グラフト材料や
吻合領域での差が認められたと報告されている19)

 術後の心房細動についてのメタ解析で,OPCABが優れていると報告されているが, 逆にMASS3 では,OPCAB群で心房細動の発生が多かった11),16)

 心房細動抑制については,β遮断薬,amiodarone,sotalol,statineなど薬物療法の影響が大きいことを周知しなければならない.
 
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虚血性心疾患に対するバイパスグラフトと手術術式の選択ガイドライン
(2011年改訂版)

Guidelines for the Clinical Application of Bypass Grafts and the Surgical Techniques( JCS 2011)